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第13話 そのデート、本当に効果ありますか?

last update publish date: 2026-07-01 16:30:49

――マルトニア学園の学生食堂カフェテラス

「ご注文を復唱させていただきます。ハムエッグサンドがお一つ、ボンゴレビアンコがお一つでお間違いありませんか?」

ウェイトレスがエーリック達の注文を確認する。フリルをあしらった黒を基調としたミニスカートの制服が実に可愛らしい。

「うん、間違いないよ」

「それでは少々お待ちください」

一礼したウェイトレスがくるりときびすを返すと、短いフレアスカートの裾がひるがえる。ニーハイとスカート裾の間の絶対領域がエロ可愛い。

見えそうで見えない領域に男達の視線が集中した。チラ見であったのだが、近くにいる令嬢達にはバレバレである。

本能に逆らえなかった男達は女性陣の冷たい視線に針のむしろ状態だ。

エーリックだけはウェルシェに釘付けロックオンだったので、彼は最愛の女性からの顰蹙ひんしゅくを買わずに済んだようである。

「ウェルシェは良かったのかい?」

「何がでございましょう?」

「いつもは友人とランチしていただろ?」

ウェイトレスが離れたのを確認してからエーリックは話を切り出した。

「ここのところお昼は僕と二人だから大丈夫かなって」

ウェルシェはいつもキャロルと昼食を摂っていた。これはエーリックがウェルシェの交遊関係に遠慮していたからである。

そんな遠慮が弱腰に見られる原因となっているのだが、ウェルシェはエーリックのそんな心遣いを好ましく思っている。

「僕が情けないばっかりに、ウェルシェには迷惑をかけてしまったよね」

「いいえ、私もエーリック様とランチをご一緒できて嬉しいですわ」

この言葉に噓偽りはない。ただ、周囲への婚約者アピールが必要だったとはいえ、キャロルに済まないことをしたとは思っている。

もっとも、事情を察して彼女は笑って許してくれたが……むしろ周りに見せつけてこいと発破をかけられた。

「もしかして、ご迷惑だったでしょうか?」

「そんなわけないさ!」

ウェルシェがしゅんと落ち込んで···とエーリックは慌てた。

「僕らの仲を見せつけるだけなら、何もウェルシェに迎えに来てもらう必要はなかったかなって思ったんだ」

貴族の世界では女性から男性を誘う行為ははしたないとされている。ウェルシェの評判に傷がつくのではないかとエーリックも心配したのだ。

「エーリック様も私をはしたない女と思われますか?」

「ないない! ウェルシェはとっても奥ゆかしいよ。それに一緒にいられてとても嬉しいし」

「それを聞いて安心しましたわ」

ウェルシェにとって、エーリックの心証こそ大事。

エーリックはグロラッハ領に莫大な富をもたらす福の神なのだから、他の有象無象など些事さじでどうでも良いのである。

それにもともと、他の令息達にウェルシェの方がエーリックにご執心なのだと匂わせるのが狙いなのだ。多少はしたないと思われるくらいがちょうど良い。

「他の殿方にどう思われようと構いませんわ。ですが、エーリック様に嫌われたらと思うと私……」

「僕の為に頑張ってくれているウェルシェを嫌うわけないじゃないか」

エーリックの為と言うよりグロラッハ領の為なのだが、ウェルシェはもちろん真意をきちんと彼にバレないように隠している。

「それで最近はどうだい?」

「エーリック様とお昼をご一緒するようになって格段に声を掛けてこられる殿方が少なくなりましたわ」

確かにウェルシェにちょっかいを出す不心得者はだいぶん減った。

「それは良かった」

「これもエーリック様のお力添えのお陰ですわ」

まあ、完全にゼロにはなっていないが――

「やあウェルシェ、今日も麗しい君の姿を見られて私は幸運だな」

「……ケヴィン様」

こんな風に……

周囲はエーリックに遠慮して声を掛けられない雰囲気であったのに、無粋な人間にはこの防波堤も意味をなさないらしい。

その筆頭ケヴィン・セギュルの登場に珍しくウェルシェは顔をしかめた。

「敬称などよそよそしい。君と私の仲なのだからケヴィンと呼び捨ててくれ」

「ケヴィン様、何度も申し上げているではありませんか。あなた様とは親しい間柄ではございませんわ。気安く呼び捨てないでくださいまし!」

猫を被っているウェルシェが語気を荒げるのはかなり珍しい。

「ケヴィン先輩、さすがに許可無く婚約者を持つ女性を呼び捨てにするのは感心しませんよ」

自分を無視して頭越しにウェルシェを口説こうとするケヴィンに、温厚なエーリックもむっとしたようだ。

ところが、ケヴィンは悪びれた様子もない。

「何も問題はないだろう?」

それどころか、ウェルシェとエーリックを驚愕させる爆弾発言を投じた。

「私とウェルシェは相思相愛なんだから」

――と。

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